本年度は(1)1980年代以降広東省における道観復興事業の推移、(2)廟と道士、風水師等宗教職能者の活動の現状の2点に焦点をあて、現地調査によるインタビューと資料収集を中心に研究を進めた。現地調査は、平成11年8月2日〜9月6日、平成11年12月18日〜25日、平成12年3月19日〜31日の3回に分けて行った。まず8月の調査では、香港道教聯合会に香港道教界の現状について話を聞き、次に約1週間広東省の羅浮山、清遠県など著名な道教聖地を尋ね、復興した道観の歴史と復興の経緯、そして現状についてのインタビューを行った。その後の1週間は広東省海豊、陸豊県において風水師と道士の活動の現状についての調査を行った。また12月の調査では四邑地域の廟や祠堂を参観した。3月の調査では、広東省道教協会が置かれている花都市の圓玄道観を訪問し、広東省における道観復興の全般的状況について話を聞いた。これらの調査で収集した資料の整理、分析を行った結果、80年代の道観復興事業は、主として重点文物単位の保全が主たる目的であったのに対し、90年代の道観復興事業は、地方政府、地元政府、地元の開発業者による地域振興の一部として進められ、これに香港の道教教団の勢力争い、97年に向かって昂揚したバブル経済とナショナリズムなど、様々な要素が複雑にからみあって進行したこと、農村、都市ともに宗教職能者の活動が復活しているが、都市化に伴い骨灰安置施設や霊位安置サービスなどの需要が増加していることなどが明らかになった。これらの見解をまとめた中間報告は、平成12年1月29日、道教文化研究会において、「広東道教の歴史と現状」と題して発表している。また写真、映像資料をインターネットのホームページで公開すべく、現在準備中である。
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