本年度も、昨年度に引き続き、平安京火災史史料のデータをデータファイルソフトを使ってデジタルカード化していった。 作業の中で、従来平安時代研究の基本文献として評価されてきた史料集『大日本史料』のミスを発見することになり、正確なテキストを作成していく必要が生じた。そのため、東京大学史料編纂所などへ古記録の写本の写真調査に行き、文字の確定作業も行った。短期間で平安時代の古記録すべてを網羅することは出来なかったが、『親信卿記』などについては、疑問の残る点を残しながらもテキスト確定作業の成果が上がった。 データベースづくりは、まだ完成していないが、『大日本史料』第2編をテキストファイルに打ち込む作業は終了した。キーワードを付け整理していく作業は今後も続けていくことになる。さらに、ホームページ上にて公開していくための準備も進めている。これによって、平安京火災史の基本史料が広く活用されることになるだろう。 さらに、各論として、火災発生時の平安貴族の対応についてもう一度考え直した。これは以前、「平安京における都市の転成」(『日本史研究』415号、1997年)で行った分析の新たな視角からの再検証作業であった。特に、藤原道長という特定の人物に焦点を当て、彼を巡る人間関係を火災という状況において把握し直した。その結果、前論文での指摘の再確認を行い、都市文化としての人的ネットワークの評価をさらに深めることが出来た。この点についての実証論文を現在準備中である。
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