本年度は、年度当初に計画した実施計画に基づき、以下のような調査・研究をおこなった。 (1) まず、科研費の旅費を活用して、全国各地において史料調査を実施し、基礎資料となる古文書を採訪した。調査を実施したのは、長野県長野県立歴史館・山梨県山梨県立図書館甲州文庫・山梨県南都留郡河口湖町三浦雄家文書・東京都東京大学史料編纂所・東京都国立公文書館内閣文庫・岡山県岡山大学附属図書館池田家文庫・宮城県東北大学附属図書館狩野文庫である。 (2) 調査方法は、大学図書館や博物館、史料保存機関では、古文書の閲覧と必要史料の複写を依頼し、データ収集に努めた。個人の所蔵者宅では、古文書の現状記録作業と目録編成、必要史料のマイクロ撮影、デジタル情報の収集作業をおこなった。 (3) つぎに古文書の画像情報を、科研費で購入したデジタルカメラにデジタル化し、パーソナルコンピュータに入力した。こうして構築したデータベースを基礎に、古文書の真偽鑑定を試みた。主にデーベース化の作業をおこなったのは、戦国大名武田氏や徳川氏の印判状の、印鑑および筆跡に関する情報である。 (4) 鑑定の結果、いわゆる偽文書が作成される経緯・目的・作成次期について様々な情報を得ることができた。とくに山梨県立図書館の調査では、画像処理した印鑑の比較検討から、偽文書が山梨県内の人間が、19世紀の初頭におこなったことが判明した。また偽文書作成業者を2名ほど発見することができた。 (5) 以上の成果をもとに、いくつかの学術論文を公表した。
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