本研究は、征韓論政変から佐賀の乱に至る時期における士族の動向を全般的に把握し、近代日本の対外観に著しい影響を及ぼした征韓論の形成過程を検討することが目的である。こうした問題に関して政治史的見地から検討した研究例は必ずしも十分ではなく、平成11年度は基本的な資料の収集につとめた。(1)まず、当該時期の政治状況や征韓論に関する文献を収集し、基本的な情報の確保に努めた。(2)これと平行して国立公文書館・国立国会図書館憲政資料室・東京大学史料編纂書が所蔵する政府中枢の文書から、佐賀の乱前後における国内状況を示す史料を収集した。(3)さらに、佐賀の乱鎮圧の具体的状況を分析するため、現地の戦跡を調査するとともに、防衛庁戦史部図書室が所蔵する陸軍省文書を分析し、必要な資料を収集した。(4)佐賀士族の動向に関する直接的な史料については、旧佐賀藩領である佐賀県および長崎県の行政文書を検索したが、事件時の混乱などを反映して数量的には乏しかった。引き続き、隣接する熊本県および福岡県などの行政文書を調査し、欠落を補っていく予定である。(5)京都府立総合資料館所蔵の京都府庁文書や、京都大学付属図書館および各学部の図書室においても関係資料を抽出する作業を行ったが、来年度は佐賀から離れた地方の史料も検索し、収集したデーターを総合的に分析することを通じ、征韓論の展開や佐賀の乱が当時の社会や政治に与えた影響をより具体化させていく。
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