今年度は、以下のような調査を行った。 1全国各地に所在する資財帳の写本調査。 2原史科ではなく写本として伝存する史料の正確な釈文の作成。 3資財帳に関する文献の収集。 4資財帳の釈文をパソコンへ入力する。 5資財帳の機能についての研究の一部。 このうち4については、奈良時代の資財帳について中心的に行い、かなりの分量を終わらせることができた。ただし、細字双行の文字列はともかく、さらに双行の文字列について、いかに表記するのかという問題が残った。来年度の課題としたい。 5については、その制度的変遷について考察した。その結果、平安初期の資財帳制は、国司および寺別当の交替解由制と密接な関係があり、資財帳の提出間隔と、国司および寺別当の任期が密接な関係にあったことが判明した。また、貞観十五年成立の『広隆寺資財帳』によれば、僧綱所が資財帳の提出を命じているが、それは、貞観十二年に寺別当に交替解由制が課された結果、勘会すべき基本台帳がなく、勘会に窮した結果、新たに資財帳が必要になったためと推定した。
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