今年度は、18世紀末から19世紀初頭にかけてイギリスで盛んに行なわれたソーシャル・リフォーム運動のうちの一つとして反奴隷制運動を取り上げ、従来許容されていた奴隷貿易や奴隷制度が非人道的であると社会的にみなされるようになっていく過程と、その背景について考察した。奴隷貿易や奴隷制に反対する人たちの主張がそれぞれの立場により多様性にとんでいたことを確認したうえで、論争の変遷をたどることで、当時のイギリス人にとっての「文明化」された社会の具体像や、「人道主義」の理念とはどのようなものであったのか、それがこの時期どのように変化したのか、さらにはそれがイギリス人の対外政策にいかなる影響を与えたのかを検討した。
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