実相院には平安時代から江戸時代までに亘る3000点以上もの文書・典籍が存しており、その内容は多岐に亘る。経典や仏教関係書は天台宗寺門派のものを中心として、儀式・作法に関するものや訓点資料(西墓点を中心とする)の存在など、当時の活動の実態を解明しうる資料であることが確認された。また、実相院は朝廷や室町・江戸幕府との関係から天皇・将軍の自筆書状や当時の政治・経済・社会・文化を窺わせる古文書、また、新発見の門跡日記は江戸時代を通じた歴代門跡の記録として注目されることも確認できた。更には、江戸時代初期の義尊僧正と宮中との深い関係からこの時期に国文学資料として注目されるものが多くが書写・収集されており、流布本系統とは異なる異本系統のものの多いことも確認できた。以上のごとく、実相院の文書・典籍は仏教史学・日本史研究や国語学・国文学研究の上で重要な資料であることが確認された。 本申請においては、文書・典籍の調査とそのデータ化、公開を行なうことを旨とし、その成果として、データ化の方法を検討して雑誌論文としても公開した。また、実相院の文書・典籍に関するデータについては、順次、研究代表者のホームページ(http://homepage2.nifty.com/〜arare/)において公開する予定である。まず、第一段階として、本調査の基礎としたデータをデータベースの形で公開することを予定している。 また、本申請における成果についても、同ホームページ上においてPDFファイル形式にて公開中である。
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