研究概要 |
本研究は,日本語方言の条件表現の体系を,形態的・系統的・意味的・談話的側面から総合的・統一的に記述し,それら複数の方言の体系を対照することによって,日本語諸方言の条件表現に見られる,広義の文法的特徴の共通点と相違点を明らかにすることを目的とする。 この目的のために,今年度はまず,(1)分析資料としての方言文字化資料のテキストデータベース化,(2)音声資料のメディアコンバートを開始した。また,(3)各地の方言文字化資料から条件文を構成する接続形式を拾い出し,(4)そのうち特に,高知県南国市方言の接続形式の意味・用法に関してやや詳しい考察を加え,「接続助詞「バ」の意味・用法の方言間対照」(於:青葉ことばの会,1999.12.18)として口頭発表を行った。さらに,(5)臨地面接調査のための調査票の改訂版を作成し,(6)鹿児島市と大阪市において高年層話者を対象に臨地調査を行った。 方言文字化資料と臨地調査の結果から,条件表現のうち順接仮定条件表現については,談話論的要因の関わり方に方言間で違いのあることが見出された。「期待/反期待」という発話の意図が関与的な方言と非関与的な方言,同一の状況を「条件関係」として表現する方言と「継起関係」として表現する方言,といった類型の存在が明らかになりつつある。他の側面からの要因についても,類型化につながる事実を積み重ねる方向で,データの収集と分析を進めた。
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