本年度はこれまで収集した茶書に加えて、あたらしい所蔵先にも出向き、書誌的な調査もふくめた資料収集に努めた。 また、井原西鶴の作品を中心に茶の湯との関連を調査し、『日本永代蔵』巻四の四「茶の十徳も一度に皆」を中心に、その解釈に茶の湯文化がどのような影響をもたらすかの考察をおこなった。本年度はとくに「茶の十徳」の近世初期文芸との関連を調査した。京都大学図書館蔵『茶湯十徳伝』と今日庵『茶之湯十徳伝』・神宮文庫蔵『杉木普斎伝書』の本文の関連についての調査は、成果であった。 上記のような調査活動をふまえて、第12回茶の湯文化学会研究会(平成12年2月20日 東京)での研究発表「『日本永代蔵』巻四の四「茶の十徳も一度に皆」考-「茶の十徳」を中心に-」を実施し、茶の湯文化学会での評価を収めた。さらに、本課題研究の成果を、筑波大学文芸・言語研究科紀要『文藝言語研究』第37号にも「『日本永代蔵』巻四の四「茶の十徳も一度に皆」考-「茶の十徳」を中心に-」と題する研究論文として発表する予定である。(平成12年3月刊行予定) 次年度は、本年度の研究成果にくわえて、さらに近世期初頭の文芸と茶の湯文化の関連について、より精査な調査をこころみ、そのデータの蓄積にいっそう努めていくつもりである。
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