本年度は前年度収集した茶書に加えて、あたらしく国文学研究資料館の特別調査員調査とあわせ茨城大学などの所蔵先にも出向き、書誌的な調査もふくめた資料収集に努めた。 また、井原西鶴の作品を中心に茶の湯との関連を調査し、『日本永代蔵』巻三の三「世は抜取りの観音の眼」と巻四の三「心を畳込む古筆屏風」を中心に、その解釈に茶の湯文化がどのような影響をもたらすかの考察もおこなった。 上記のような調査活動をふまえて、日本読書学会第44回研究大会(平成12年9月23日 東京)での研究発表「『庭訓往来』からみた江戸時代初期の子どもの教養の実態について-筑波大学中央図書館乙竹文庫蔵の諸本を中心として-」を実施し、近世期初期における茶の湯文化が教育界にどの程度浸透していたかを考察した。そのうえで、文芸への流入の可能性について検討し、日本読書学会での評価を収めた。(『日本読書学会発表資料集』pp99-106)さらに、本課題研究の成果の一環として、日本近世教育史の観点からも重要なコレクションである教育学博士乙竹岩造氏のコレクションである筑波大学図書館蔵乙竹文庫の書誌目録の整備にもあたった。『筑波大学図書館蔵乙竹文庫目録 文学編(一)』はその成果でもある。 また、『茶道学大系』第9巻『茶と文芸』(淡交社刊)にも「西鶴文芸への茶の湯の影響」と題して『日本永代蔵』に見られる二つの目利き譚に関する論文を分担執筆し、本研究の成果のまとめとした。本論については、月刊茶道雑誌『淡交』2月号で紹介されるなど、茶の湯文化研究の側面からも評価されるに至った。
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