研究概要 |
1,(1),大阪商業大学(以下「大」と略称)と神戸市立博物館(以下「神」)に所蔵される八田氏「書物目録」(以下それぞれの「書物目録」を「大阪」「神戸」と略称)は別内容である。「大阪」は、八田五郎左衛門が明和五年(1768)までに所蔵・作成していた公的書類の控え等の目録であり、「神戸」は、八田氏の蔵書目録である。(2),「大」「神」については文書別目録により、九州大学については受入原簿の一部閲覧により、所蔵の八田家文書をリスト・アップし、それぞれ未報告文書を見出した。東京大学については、新たな文書発見に結びつく有効な手だてを見出し得なかった。(3),「大阪」と、(2)で作成したリストの対照によって、「大阪」が、明和五年までに八田五郎左衛門が作成所蔵していた文書の網羅的目録でないことが判明した。にも関わらず、「大阪」には、現在伝存を確認することのできない文書名が多数含まれる。(4),八田氏の子孫が大阪に現存し、点数未詳ながら未だ文書を所蔵されているとの情報を入手した。また、八田家文書を所蔵する他機関についての未確認情報を得た。これらの八田家文書の内に、(3)の伝存未確認文書が含まれる可能性をなしとすることはできないので、来年度の出張調査による確認作業を期したい。(5),上記(1)〜(3)については、来年度『岡山大学文学部紀要』34において具体的かつ詳細な報告を行う。ただし、平成12年度上半期に、上記(4)の補足調査を行うことが可能であれば、調査の結果により、情報を追加し、考察を補正する。2,「唐人殺し」文芸に関する専著(但し、やや一般向け)である、池内敏『「唐人殺し」の世界』(臨川書店)が、本年度出版された。しかし、本年度、同書で考察の対象とされている以上の諸本を見出しており、しかも、同書における諸本比較の方法は、やや粗と言わざるを得ず、その考察に従ってよいか躊躇われる部分がある。本件に関する考察は『説話論集』(来年度七月頃原稿提出締切)において報告する。
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