11年度5月より毎月2日(8月は5日)の割合で如来寺(いわき市山崎)の聖教悉皆調査を始めた。調査はカード取りと写真撮影(カメラ・デジタルカメラ・デジタルビデオ)を中心に進めている。カードによって得た情報は、データベース化を考え、雛形作りをしている。 如来寺蔵の聖教は総点数1500を優に超え、調査終了にはあと2年は最低でもかかることが予想される。特に月形箱に納められている名越派の秘書類は、浄土宗全書に収められている該書と字句の異同が著しく、名越派の教説を考えてゆく際に、重要なものとなる。 月形箱の秘書の内、『題額集』は浄土宗全書には採られていないが、名越派を支える根本の書である。良定の『題額聖〓讃』 (以下『聖〓讃』と記す)も、『題額集』の注釈書であることが確認できた(『題額集』は国書総目録にも単独の項目がないが、大谷大学蔵『題額聖〓讃』では『聖〓讃』とセットになっている。但し版本であり、如来寺蔵の写本群とは、やはり字句の異同が見られる)。将来的には、如来寺、壇王法林寺(末見。12年度調査予定)の蔵書調査の成果をもとに、テキストクリティークを重ね、名越(派)叢書の刊行を目指したいと考えている。 如来寺の聖教調査を進める中で、良定の著書の内『聖〓讃』の写本を発見した。書写年代は近世前期と目される。内閣文庫蔵本・大正大学蔵本・東洋大学蔵本・大谷大学蔵本・龍谷大学蔵本ともに版本であり、写本は確認されていない。貴重なものであることは言うまでもない。諸本と校合しつつ、翻刻を進めている。
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