今年度は、出版メディアの拡大にともなう文学受容の場及びメディア状況の変容という視点と、近代日本の国語政策という視点から、1920年代日本文学の再検討を行うことを研究テーマとし、前年度に引き続いて、早稲田大学図書館、日本近代文学館などにおける資料の調査・収集を行うと同時に、前年度からの継続研究を発展させ、逐次、可能なものから論文化することにつとめた。 1920代の横光利一をてかがりとして、外国文学受容の問題を出版メディアとの相関性のもとに検討し、また、近代日本の国語政策と作家との関連を、同様に横光利一に即して考察をした。これら研究の成果は、それぞれ、「鏡としてのドストエフスキー・ストリンドベリイ-大正期・横光利一への視角」(「国文学 解釈と鑑賞」第829号2000・6至文堂)、「横光利一にとって「国語」とは何か」(「昭和文学研究」第41集2000・9昭和文学会)として公刊した。 これと並行して、同時代の作家や文壇との関連、研究史の展望なども含めて、文学と文学研究の機制を把握する作業も行った。その成果の一部として、「横光利一研究展望」(『川端文学への視界15』2000・6教育出版センター)、「徳田秋声と横光利一-「芭蕉と歯朶」評を中心に」(『徳田秋声全集』「月報20」 2001・1八木書店)、「書評・小田桐弘子著『横光利一-比較文化的研究』(「比較文学」第43号2001・3日本比較文学会)がある。
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