全国各地に散在する美術品売立目録類や、また個人蔵の古筆資料、及び西本願寺蔵手鑑・大阪市立美術館蔵手鑑ほかの未刊手鑑類を調査し、学界未知の文学資料の発見に努めた。一方で未詳歌集切の集成・研究を容易にするべく、既刊複製手鑑類のデータをパソコンに入力し、古筆資料のデータベースを作成した。以上の作業は現在も継続中であるが、とりあえず本年度を終えた時点で、ほぼ百種近くの未詳歌集切を収集することができた。その具体的な内容については、来年度以降に検討していくつもりである。なお本年度の作業中に、従来散佚したと思われていた二作品の断簡を見出した。すなわち、伝鴨長明筆『伊勢滝原社十七番歌合』断簡、及び伝藤原清範筆『新撰風躰和歌抄』断簡である。前者はその内容から、西行最晩年の自歌合『諸社十二巻歌合』の一部かと推定されるもの。また後者は、『夫木抄』と『私所持和歌草子目録』のみに書名が残る、鎌倉末期の私撰集の、巻第四の巻頭部分の断簡である。その詳細についてはすでに論文にまとめた。論文は本年度中に公表される予定である。ちなみにそれら以外にも、例えば伝宗尊親王筆『如意宝集』断簡、伝西行筆五首切『右大臣家百首』断簡、伝寂蓮筆『伏見院三十首歌』断簡、伝兼空筆下田屋切『松花集』断簡などの新たなツレを発見し得た。いずれ「散佚歌書切集成稿」とでも銘打って、一括して紹介したいと思っている。
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