研究概要 |
本研究の目的は,日英語における名詞化補文の特性を意味的・機能的視座から比較・検討しながら、両言語の情報構造と伝達機能の個別性と普遍性を明らかにすることである。研究初年度の本年度は,英語のin that節とnow that節,および日本語の「ので」節を取り上げ,基礎的資料(TIME誌,Los Angels Time等のインターネット上のデータベースも活用)を収集、整理、分析しながら,that節と「の」節の特性を実証的に明らかにした。まず,in that節が表現する意味関係を実証的に明らかにしながら、その派生・拡張過程について考察した。空間領域を合図するinの項に現れるthat名詞化補文の情報特性、その情報領域内に位置づけられる主節の情報について認知論的視点から分析した。次いで,now that節は話題中の現時点の状況を既定情報として提出すること、主節はその状況を基点情報として自動的に成立する状況や判断といった命題情報を担うことを示唆した。併せて、様々な言語資料をもとにnow that節の談話機能や語用論的含意についても説明を与えた。さらに,「空間」概念を認知基盤として情報を言語化するin that節と「時間」概念を基盤とするnow that節とを比較しながら,that名詞化補文の既定性の保証過程についても考察した。日本語の名詞化補文「の」節と「で」から成る「ので」については,以前の状況が変化・移行した結果的状況として成立している現況に基づいて既定性が保証される場合と、事物に本来的に備わっている特徴や性質に基づいて既定性が保証される場合とがあることを論じた。それぞれの既定性を表現する「ので」節は、対応する英語においてnow that節とin that節という異なる言語形式によって表出されること,さらには「ので」と「から」を比較することで、語用論的含意の相違についても明らかにした。
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