本年度は、プスコフとならんで、プスコフ文化の形成に多大な影響をあたえたノヴゴロドの文化をも視野にいれて、研究をおこなった。プスコフ、ノヴゴロド文化の研究には両都市諸教会の建築ならびに装飾美術の抱括的把握が不可欠であるが、本年度はそれらの映像資料を作成、整理するための機器(パソコン、ビデオカメラ、スキャナー)ならびに画集等を購入して、資料の作成をおこなった。さらにこれらの資料によって考察をすすめた結果、ノヴゴロド・プスコフを中心とする北部地方の文化は、モスクワを中心とする中部ロシアの文化とは性質を異にし、隣接するリトアニア、カレリア地方の文化的諸要素を融合させて成立したことがわかった。したがって、モスクワ公国による強制的な併合がなければ、或いは、遅れれば、中部ロシアから独立した民族性を成立させる可能性があったと結論することができる。
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