夏と春の2度にわたって現地調査を行い、資料の乏しいツングース諸語の記述研究を行っている。年度末にはそれらを集成したものである「エウェンの歌」及び「ナーナイの民話と伝説5」が刊行される(現在印刷中である)。これらは現地で録音した生の音声資料から一字一字書きおこしたもので、また民話や伝説、歌といったジャンルの性格上、当該民族の文化的な情報を豊富に含んでいる。当言語の音声や文法の仕組みの解明にも必要不可欠のものである。 またこうした資料から帰納される文法研究も他方で大きな進展があった。 ツングース諸語における使役の特殊性について、言語学会(秋季)にて発表した。またアルタイ学報第9号における「アルタイ諸言語における所有/存在を示す一形式について」ではモンゴル語の-tai^3とナーナイ語の-ko/-ku、トルコ語の-liのような形式が、譲渡不可能的な名詞をとることを資料より立証した。
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