本年度の研究成果を以下の5点にまとめる。 1.否定表現「-ない」に付与される韻律変異の規則性について、ヴァリエーション理論の枠組みで研究をすすめた。言語使用域(レジスター)、話者の性別、会話参与者の職階差、否定表現自体の相互交渉的意味などの拘束要因の存在が明らかになった。これらの研究成果ついては、「社会言語科学会」弟9回大会(2000年9月、中京大学)のワークショップ(「社会・文化的認知と談話分析の新たな視界」)で口頭発表を行った。 2.上記1の研究発表を論文にまとめ、「日本人の言語交渉における対立意見表明の韻律モダリティー:レジスター研究の視点から」(北星論集38号、北星学園大学文学部、13〜31ページ)として出版した。 3.上記1の研究成果について、アリゾナ大学大学院認知科学専攻課程教授Dr.Malcah Yaeger-Drorからレヴューを受けた。レビュー内容を基に上記研究をさらに洗練させていくことと、Yaeger-Dror教授が取り組まれている米語とフランス語における否定韻律の変異研究との比較研究を行うことに、今後の研究の焦点を絞っていくつもりである。 4.新たな談話資料を収集し、記録・保存するためにフィールドワーク用のノートパソコンを購入した。アルバイトを雇い、既存または新たに収集した会話資料の文字起こし作業を継続している。 5.参考図書を購入し、資料の量(話者や分析トークン数)や種類(レジスター、談話場面など)を増やし、上記2の論文に改訂を加えていくつもりである。
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