親族・関係名称体系の類型論研究を実施するために、研究初年度である11年度においては、まず、基礎資料として広く知られている親族・関係名称体系の資料の収集につとめ、これらの資料を随時比較対照することによって、カテゴリー化における類型の分類の基準と分析の必要な項目の設定について考察した。次に、社会の成員全体が関係名称で分類されるが、研究代表者が1993年以来研究対象としている中部コイサンとは異なり出自集団に基づく社会構造をもつオーストラリアの諸体系との比較対照研究をおこなうため、オーストラリア・メルボルン大学を訪問した。ここでは現地の研究者との情報交換のもとに研究に必要な基礎的文献および最新の文献を収集し、口頭発表や議論を通して広く意見を交換し研究計画のレビューを受けた。さらに、意味記述においてカテゴリー化をどのように扱うかという問題を考察するために意味論関係の文献を収集し、カテゴリーに対する古典的・非古典的アプローチがそれぞれどのように親族名称の記述に応用されてきたかを考察し、論文としてまとめた(来年度中に公表予定である)。 こどもの親族カテゴリー獲得に関しては、今年度は基礎文献の収集に留まった。現地調査の実現に向けて来年度は先行研究のレビューおよび質問票の作成に取り組む予定である。またさらに来年度は、コイサンやオーストラリアの関係名称体系とまったく異なる社会の体系として、日本やアメリカ合衆国の関係名称体系を比較・対照し、カテゴリー化における類型の分類の基準および分析の必要な項目についてさらに考察を進める予定である。
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