親族・関係名称体系の類型論研究を実施するために、2年目に当たる平成13年度においては、基礎資料として広く知られている親族・関係名称体系の資料の収集を継続した。その結果、グイの体系(split nuncle patternと命名した)が非常に珍しい(世界で唯一の可能性があり記述的に価値があると同時に、理論的にも不可能な体系であると一部の研究者によって考えられているため理論上貢献するような形で議論を進める価値がある)ことをあきらかにした。同時に、コイサンの体系を比較対照することにより、このようなめずらしい親族名称体系の分布と、classificatory siblingである平行いとこの長幼の決定が相対的(親同士の関係によって決まる)なものか絶対的(本人同士の年齢順によって決まる)なものかという指標とが、相互に関連し合って出現している可能性が高く、それはコイサンの分布するある地域における、言語的系統を超えた地理的特徴であることを突き止めた。さらにこれらに関して広く議論を進めるために、コイサンの体系とuniversal kin systemを持つという点で共通点を持つオーストラリア原住民の親族名称体系について知見を得universal kin system間の類型について考察を進めた。なおこれらの研究の実施に際しては、オーストラリア・メルボルン大学を訪問しセミナーでの発表を通して現地の言語学者および人類学者と情報交換するとともに、オーストラリア人類学会(於西オーストラリア大学)にて口頭発表を行った。これらのテーマは現在論文としてまとめているところである。 また昨年度取り組んだ、意味記述においてカテゴリー化をどのように扱うかという問題に関しては、カテゴリーに対する古典的・非古典的アプローチがそれぞれどのように親族名称の記述に応用されてきたかを考察し、論文として公表した。
|