研究概要 |
本研究の目的は,談話交替などの会話調整現象と韻律特徴との関係を実際の会話データにもとづき定量的に分析し,韻律特徴が会話コミュニケーションにおいて果たす役割を明らかにすることである.この目的に対し,本年度は,(1)高品質の会話データを効率的に収集・構築するための手続きを確立し,(2)それにもとづきデータを構築することを目標に作業を進めてきた. (1)については,書き起こしに関する各種マニュアル(発話単位の認定基準,文字化の基準,表記の基準,言いよどみやフィラーなどのラベリングの基準)を作成すると同時に,作業の効率化を図るために,単位認定および文字化のための支援ツールを作成した.また,ここで得られた知見の一部を,雑誌論文(日本語学,1999)で報告すると同時に学会のシンポジウムで講師として発表した. (2)については,防音室を利用して,2人の会話をDATおよびビデオ(Hi8)に収録した.研究の目的から,高品質の音声データが必要となるため,指向性の高いヘッドセットマイクを利用して2チャンネル独立に収録した.その音声を16bit 16kHzサンプリングでパソコンに取り込み,(1)で構築したマニュアルおよびツールに基づき現在書き起こしテキストを作成している.データの作成は来年度の5月には終了する予定である. また,データ構築と平行して,現有の会話データ(課題指向的会話)を利用して韻律と話者交替現象との関係を調査し,雑誌論文(認知科学,2000)に発表した.来年度は,課題指向的会話で確認された現象が,現在構築している自由会話データにおいても同様に観察されるような一般性を有する現象であるかを確認する予定である.
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