1.今年度は、わが国の立法過程・議会弁論の比較の対象としてドイツの議会の研究を中心的に行った。ドイツでは、ボンからベルリンへの首都機能の移転に伴い、べルリンの旧帝国議会議事堂が改修され、新たに連邦議会会議場として用いられている。平成12年2月に行った現地調査により、1998年11月から始まる今次立法期間における連邦議会各会派の勢力関係や、新たな議事堂に移ったことによる議会運営への影響、それに議会運営・立法作業を支える議会事務局の作業状況等を把握した。活気ある議会弁論を支える場としての議事堂がどのような形を整えているのか、議会がどの程度国民に開かれているのかにつき、現地で様々な情報を得た。また、議会運営の主体となる各政党の本部のを視察し、現在の各党が連邦レベルで勢力的に取り組もうとしている課題について情報・資料を収集した。日本国内では地方議会の研究も行うつもりであるため、現地ではベルリン市議会の本会議および委員会(公開)を傍聴し、活気ある討議が行われるための制度的・手続的・物理的条件を調査した。 2.文献研究では、ドイツの立法過程の基本的流れを把握するべく関係資料の分析を行った他、独語新聞・雑誌等から現実政治の中での議会の機能を理論的に把握するよう努めた。とくに今年度は特別調査委員会の役割について活発な議論があり、その点に注目して研究を行った。また、議会主義の精神および議会運営、立法過程については、ドイツ憲法(基本法)がその骨格を定めており、基本法に定められた議会につき検討を加えた。 3.とくに議会の働きに注目しつつ、ドイツ憲法に関する論考をまとめているところである他、べルリンへの連邦議会の移転と新たな議事堂での立法過程に関する論文を執筆する予定である。また、ドイツにおける議会と司法との関係に焦点を合わせ、平成12年7月にドイツ現代史学会にて報告を行うことになっている。
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