1.米国については、その司法審査における最たる特徴である「実質的証拠法則」について、二〇世紀初頭以降の行政手続の発展史と、憲法上の司法権概念の組み合わせによって理解されるべきことを明らかにした。同時に、わが国におけるその導入が、行政手続と司法権概念の双方の点で、いわばバックグラウンドを欠いた状況にあり、わが国における「実質的証拠法則」の"居心地の悪さ"をその観点から説明できるとの仮説を提示した(研究論文として発表済み。著書(の一部)としても2000年中に公表予定)。これが、1999年度の主たる研究成果である。 2.次に、米国の、「cases and controversies」のうち、日本法との対比上興味の持たれるタイプとして、政府機関の間の訴訟例および研究論文について、収集と整理を行った。これは引き続き次年度にも続行の予定である。さらに、紛争成熟性にかかるものについても、収集を始めた。 3.日本の「法律上の争訟」については、より根本的ないし一般的に、日本の裁判所がいかに自らの憲法上の役割を理解しているかを実例から析出する作業を開始した。1999年度は、準備的作業として、この点がもっとも顕著に現れる法律解釈方法論について見ることとし、実例としては、情報公開条例にかかる訴訟を取り上げてた。これは、立法者意図と裁判所のその解釈の間のずれが、近年もっともよく現れている分野だからである。その視点から、判例につき考察を試み、研究論文として試論を公表した。
|