本研究は行政と私人との協働と参加の可能性と問題点、その理論的位置づけについて考察するものであるが、本年度は準備的・理論的考察とそのための資料収集が中心となった。公表業績としては、第一に、99年5月に成立した情報公開法について、ガヴァナンス論的観点からの独自の位置づけを加えた上で、英文による紹介的分析を試みた(後記研究発表(1)。同論文校閲依頼のために謝金を支出した。)。第二に、行政行為を決定の認知基盤論的にとらえるラデーア論文の翻訳作業(後記研究発表(2)。同翻訳はグループ翻訳の成果であるが、筆者が全部分にわたり下訳を作成した。)を通じ、行政及び私人の行動を二元的に捉えるのではなく、学習可能性の観点から包括的に把握する理論的視座を得た。 今後は主たる素材として予定している広義の建設法領域に研究の重心を移す予定である。現在執筆中の論文として、(1)「地域空間管理」(仮題)(標題のような観点から国・自治体・住民・企業等の相互関係をとらえるものであり、「空間」の意味論的把握、再開発地区計画を含む協議型まちづくり、ネットワーク型国土計画などに関する考察を含む)、(2)「自治立法による土地所有権制限の再検討」(仮題)(「メニュー主義」と「認知的先導性」を鍵概念として、自治体の所有権規制についての諸判例の再検討および「まちづくり条例」・住民参加の動向を試みる)がある。また、ドイツ法における「事業案・地区施設計画」についての考察のため、資料を収集中である。
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