広義の建設法領域における協働と参加を考察する本研究は、ネットワーク的視点を重視することにより、(1)-(3)の成果に結実した。 (1)は、土地利用規制における集権と分権を、「認知的・試行的先導性」(筆者の造語)を鍵概念として考察した。条例の法律適合性に関する著名判例の読み直しにより得られた同概念を、真鶴町まちづくり条例、宝塚市パチンコ店条例事件、メニュー主義と自主条例などの現代的課題に適用することを試みた。最も基礎的なレベルにおける「認知的先導性」を担うべき住民に注目し、住民参加の新たな理論的基礎づけを目指した。 (2)は、発見的概念としての「地域空間管理」と地方分権の関係を論じたものである。「場」としての空間、「地域」概念の総合性、「都市型社会」における協議型まちづくりなどを検討しつつ、住民の協働と参加への方向性を示した。また、国土計画の問題をあわせて論じることにより、住民・自治体・国が織りなすネットワーク的関係の考察を試みた。 (3)の後半は、建設法領域における財産権者・住民・公的諸主体の法的関係の考察の基礎的前提となる財産権論を論じたものである。個人の権利として基礎づけられる部分と社会全体の効用増進の観点から政策的に基礎づけられる部分とを区別することによって、後者についての立法者の形成的モメントを強調するのが議論の眼目である。 成果(1):「自治立法による土地利用規制の再検討・メニュー主義と『認知的・試行的先導性』」 原田純孝他編『日本の都市法II』(東大出版会、2001年予定) (2):「分権型社会の地域空間管理」小早川光郎編『分権改革と地域空間管理』 (ぎようせい、2000、pp.1-43) (3):「第5章 経済的自由権」安藤高行編『憲法II』(法律文化社、2001年予定)
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