(1)カナダにおける照会制度 照会制度は、連邦及び州の政府が裁判所に対して勧告的意見を求めるための手段であり、これまでは主に法律の合憲性に関する裁判所の判断がこの制度によって求められてきた。照会制度で裁判所が法律の合憲性について判断することは、裁判所が抽象的に違憲審査することに等しいため、この制度は法律の合憲性等の公共的問題に関して裁判所が抽象的に判断するための制度であると理解することができる。 この制度を通して裁判所が公共的問題に対して適切に判断を下すためには、(1)質問事項をより具体化すること、(2)質問事項を司法判断に適したものに限定すること、(3)事実問題を含む必要な情報を裁判所が収集するための手続を整備すること、(4)利害関係者を適切に代表させるための手続を整備すること、(5)争点を十分に展開するための手続を整備すること等が必要である。 (2)裁判所の民主的正当性 カナダでは、裁判所が法律の合憲性のような公共的問題に関して抽象的に違憲審査しても裁判所の民主的正当性は害されないと考えられてきた。その主な理由は、裁判所の判断は公共的問題に含まれている法律問題のみに関する判断であり、公共的問題全体の解決方法は、裁判所の法的判断が示された後政治部門が決定するため、裁判所の判断が政策決定過程における「最後の言葉」ではないという理解である。 この考え方は、環境問題のような公共的利益に関する問題について裁判所が積極的に関与することを認める一つの重要な原理的根拠になりうると解される。
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