1960年代以後のラテン・アメリカの地域の統一国際私法の動向については、我が国において必ずしも十分に解明されているとは言い難い。1975年の米州機構(OAS)の第1回国際私法専門家会議(CIDIP)以降、ラテン・アメリカ地域では多数の実務上も理論上も重要な地域的統一国際私法条約が成立・発効しており、これらの検討・解明は、我が国際私法学の急務の1つであると考える。本研究は、このような認識の下で、ラテン・アメリカ地域の統一国際私法条約の全体像・概要について解明するとともに、理論上・実務上の観点から特に重要と考えられるいくつかの条約について詳細な解明を試みること、を目的として開始された。 平成11年度の前半は、(1)米州機構・国際私法専門家会議(CIDIP)の第1回から第5回までにおける議論・成果についての全貌(計23の条約・議定書の概要・体系・相互関係)を明らかにするため、米州機構・国際私法専門家会議(CIDIP)に関する基礎的文献・議事録の読了・整理を行った。その結果、原則として5年に一回開催されるCIDIPの議事手続、条約作成過程につき基本的な理解を得ることができた。もちろん国際条約は各国の妥協の産物であるが、条約の対象のいかんによって米国の影響力の強弱がみられる。続いて、年度の後半では、とくに国際私法総則条約および代理条約に焦点を当てて、第二次文献等をも参照して、情報整理を行った。前者については理論的に興味深い点が多く、また、後者についてはハーグ条約との異同につき現在さらに検討を進めているところである。検討の詳細については、後日、公表していく予定である。
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