英米の金融改革の背景研究として、理論基盤および改革経緯ならびに成果をたどることを当初の目標とした。平成11年度には準備作業のために米国、英国、スイスの関係研究所で資料収集を行った。その過程で、「歴史的および政治的事情を研究する」という当初予定した手法を改め、銀行資本規制に関する米国の八十年代以降の政策およびその世界的影響をたどることにした。理由は、調査の過程で、米国規制が変動期にあり(平成11年にはグラススティーガル法の廃止が決定した)、他国と米国との関係を考えるにあたって、これまでの米国を基準とするか(この場合、二十世紀後期の国際金融界の歴史描写的研究となろう)、今後の米国を基準とするか(現在および将来の世界的な金融規制により強く関連した内容となろう)で全く変わってしまうと痛感したからである。報告者は後者の方向を志向しており、そのためには、米国規制の展開を詳細にたどることが不可欠と考え、米国の近年の議事録や一次資料を整理中である。また資本規制としても、金融機関リスクコントロール方法に限定した。「リスク」としては、信用リスクや市場リスクといった、金融機関一行のリスクと、国際的な持株会社方式が取られた場合のリスクという、異なる次元のものを同時研究したい。
|