ヒトゲノム解析の急激な進展に伴い、ゲノム関連特許をめぐる環境も変化しつつある。こうした動向を受けて、本研究では、ゲノム全塩基配列の解読、コード領域の特定、タンパク質の同定という3つの段階にゲノム解析研究を切り分けた上で、これらの各段階において特許保護が可能な対象は何であるかを整理した。本研究では次に、遺伝子発現解析、SNP、ならびに相同性(ホモロジー)に基づく機能推定を題材として、「技術的貢献に見合った権利を与えるには、特許付与の可否の線引きをどこで行うか」という、政策的見地からの考察を行った。続いて、ソフトウェアの機能向上とコンピューター上の遺伝子探索を題材として、技術水準の変化が特許にどのような影響を与えるかを検討した。また、タンパク質立体構造の特許に関して、今後の検討に向けた問題点の整理も行った。 このような研究の過程で、隅藏は関連する論文を数多く発表し、またメディアをつうじた政策提言や啓蒙活動を行った。2000年度は遺伝子関連特許が国際的な議論の舞台にのぼった年であり、研究テーマとしてきわめてタイムリーなものであったといえよう。 本研究全体を通じて、ゲノム関連特許が従来の物質特許制度の枠内に納まり切らなくなり、情報自体を保護することが必要となっているということが明らかとなった。このような「物質特許から情報特許へ」という潮流により、近い将来、特許制度のあり方を根本的に見直す必要性が生じるかもしれない。
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