平成12年度においては、前年度に抽出した現行不当廉売規制についての問題点について、米国やEUにおける略奪的価格設定規制との比較法的検討、および産業組織論をはじめとする経済学的観点からの検討、を行った。それにより、現行の違法性判断基準には、ある程度の合意はあっても、より厳密な議論が充分にはなされていないこと、一貫性を欠く部分があることを明らかにした。さらに、比較法的検討を通じ、しばしば主張されるような米国やEUの判断基準を日本に用いる場合、法体系上の問題、及び解釈論上の問題があり得ること、そしてその具体的な問題点を指摘した。また、従来政府規制のもとにあった産業における規制緩和と不当廉売規制との関連では、航空産業について研究を行った。航空産業については、日本の現状とともに、自由化から20年以上の歴史を持つ米国における航空産業において発生した、独占的既存事業者による新規参入排除の問題について、米国運輸省と司法省の対応について調査した。これらの研究成果については、平成12年度日本経済法学会にて報告し(個別報告)、また近日出版予定の単著「略奪的価格設定と反トラスト法」に、詳細にまとめている。 同じく、規制が緩和されつつある規制産業として、電力産業に関心を持っており、日本の電力産業における規制緩和の状況と、そこで懸念される競争政策上の問題について研究を行った。これについては、アジア経済研究所の「平成12年度経済構造改革支援共同研究事業(通産省受託)『日本・インドネシアの競争政策と法』」のインドネシア・ジャカルタでのワークショップにおいて"Deregulation and the Competition Law and Policy〜Regulatory Reform in the Electric Power Industry in Japan〜"と題する報告を行った。このワークショップでの報告は、英文の論文として、後記11記載の報告書に掲載される予定である。
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