本年度の研究により、ISOと労働安全衛生規制との関係が最も問題とされる、労働安全衛生マネジメントシステムに関して、ISOにおける議論と、日本を含む各国の状況を、ある程度明らかにすることができた。 1994年6月以降、ISOにおいて、労働安全衛生に関するマネジメント規格開発の検討が行われてきており、現在まで活発な議論が続けられている。この点に関するISOの今後の方向性には十分注意を払う必要がある。 また、各国の動向を個別に検討する中で、イギリスのBS8800-96をはじめとして、オランダ、デンマーク、スペイン、オーストラリア等、多くの国々に安全衛生マネジメントシステム規格が既に存在することが知られた。 我が国においては、いまだJIS(日本工業規格)の開発は行われていないものの、産業ごとの規格が整備されつつあり、労動省においても、第9次労働災害防止計画の中で、労動安全衛生マネジメントシステムを新たな安全衛生管理手法として導入することとしており、これを受けた各企業の対応が注目される。 法的な基準を制定するのではなく、管理システムを作ることを要求するという、ISOのマネジメントシステム規格のアプローチ方法は、労動安全衛生規制に新たな可能性を開く可能性を内包しており、来年度もこの研究を継続したい。
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