研究概要 |
研究期間の初年度である本年度は,わが国における犯罪被害者の法的地位に関する問題点を洗い出したうえで,その観点から,諸外国,特にドイツにおける法制度の現状を明らかにすることを課題とする予定であった。ところが,その作業を行っている間に,わが国において,刑事手続における被害者保護のための法改正への動きが急激な進展を見せ,11月には,法務大臣からの諮問を受けて,法制審議会が開かれるにいたった。諮問及び審議の内容は,直接には,成人に対する刑事手続に関するものであって,本研究の直接の対象である少年保護手続を対象としたものではないが,広く被害者保護という観点から見た場合は,それは,将来的に,少年保護手続にも必然的に影響を及ぼすものである。そこで,当初の課題に関する研究と並行するかたちで,諮問に盛り込まれた被害者保護のための具体的な立法課題についても,個別に研究を進めることとした。本年度中に公表した研究成果のうち,第一の「刑事手続における被害者の保護」は,諮問の内容のうち,証人尋問における被害者の保護を図るための法的措置に絞って検討を加えたものである。また,第二の「犯罪被害者に対する情報提供」は,諮問の内容に限定されることなく,被害者に対する情報提供の持つ意味と,そのための具体的施策について広く検討を加えたものである。
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