初年度の実績は、中心作業はアフリカとグローバル化に関する文献、資料の収集と分析が中心であった。その過程で得られた重要な知見としては、アフリカが特に経済の自由化を中心としたグローバル化における単なる犠牲者の側面だけではなく、グローバル化に乗じて「主体化」するという新たな現象が確認できる点である。その意味では、アフリカを通して観察されるグローバル化は少なくともこの両面からとらえる作業を必要とする現象といえる。しかも、こうした現象の背後にはグローバル化が、アフリカにおけるローカルな政治に影響を及ぼしているということだけではなく、アフリカにおけるローカルな政治の論理がグローバル化と緊密に関係していくことで、国際社会における新たな「課題」である、麻薬の密輸、資金洗浄といった問題の一部を構成していく契機を付与されている部分も観察される。実証面では、特に南部アフリカ諸国を事例として様々な資料収集・分析を行った。特に近年犯罪が大きな課題になっている南アフリカ共和国では、グローバル化のもたらす光と影が、かなり象徴的に現象化している。特に影の問題に焦点を絞ると、ヨハネスブルグはアフリカにおける組織犯罪の「首都」と化しており、同じアフリカ大陸のナイジェリアの犯罪組織が関与するだけでなく、南アの先進国に比するインフラを利用することをもくろむ国際シンジケートの拠点としての特徴を有するようにもなっている。犯罪等に関する正確なデータについては収集が困難であるが、アフリカをめぐるグローバル化のローカルな発現の一端を押さえる試みを実証する作業の一部を構成するものにはなりえている。
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