本研究の最終年度となる今年度は、一方で継続的に関連資料の収集を進め、他方では資料の分析を進め、研究の成果の一部を論文の形で発表している。そのうち「変革期世界とアフリカ」は、文献をサーヴェイし今後のアフリカ政治研究における「外の」世界との関係をどのように関連付けていくかに関して、展望を含めた方向性を提示し、今後の更なる課題を問いかけている。ここでは、昨年度の報告書でも提示したように、アフリカの文脈で発生している新たな政治現象を考える場合に、グローバル化が、アフリカにおけるローカルな政治に影響を及ぼしているということだけではなく、アフリカにおけるローカルな政治の論理がグローバル化と緊密に関係していくことで、国際社会における新たな「課題」を創出するという双方向的な視点の必要性を強調している。また、グローバル化とアフリカのめぐる政治問題に関する発表論文としては、共著として年度内に刊行される『アフリカ比較研究の視座』の一章である「アフリカをとりまく『市民社会』概念・言説の現在:その位置と射程」において、グローバルな文脈で普遍化する「市民社会」言説がアフリカへの援助政策として現実に適用された時に生じてきている政治問題を論じている。ただし、グローバル化のもたらす光と影が、かなり象徴的に現象化している南アフリカ共和国の事例に関しては、昨年より資料収集を行い、分析を加えようとしているが、問題が「犯罪」という問題化と「政治的暴力」という問題化の交錯する場に生成しており、最終的に論文、あるいは著作の形でまとめるためには更なる時間が必要となる見込みである。
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