研究概要 |
UNDPが支援してきた二度目の生活水準調査(LSMS)の結果が1999年末に公表され、ここ5年間でヴェトナムにおける貧困がどのように変化してきたのかが明らかとなった。また、その結果をもとに作成された世界銀行による報告書から、ヴェトナムにおいては絶対的貧困の割合が確実に低下していることがわかったが、その一方で市場経済化の歪みによる不平等が拡大しつつあることも明らかとなった。ここに来て、研究目的で述べたように、ヴェトナムにおける貧困格差が大きくクローズアップされ、分配機能を通じた国家の役割の再確認と開発援助の在り様が問われている。次に、貧困の原因に関しては、それが分野横断的な性格を帯びていると同時に、それぞれの地域の特性も有していることが明らかとなった。たとえば、中部沿岸地域では自然災害によって非貧困層が再度貧困層に転落することがあるが、間接的な原因としては山岳地帯の森林伐採が挙げられている。このように、村落レベルでの考察と同時に、マクロレベルでの貧困緩和政策の考察も重要であることがわかった。UNDPは、ドイモイ(刷新)政策を人々の選択肢を拡大させてきたという点において高く評価しているが、市場経済化による恩恵の分配については言及していない。今後フィールド調査を通じて、グッド・ガヴァナンスと持続可能な人間開発という観点から、この点に関してどのようなアプローチをしているのか考察したい。 11月1日から11月10日までの日程で、ハノイにあるUNDP事務所および図書館を訪れ資料収集に努めたが、その結果、Ben Tre,Yen Bai,Quang Binhの3省以外にも、Tra Vinh,Quang Tri,Ha Giangの3省においても貧困緩和政策が進められていることがわかった。そのため,今後はこの3省も加えた6つの省においてUNDPの活動を比較検討していく予定でいる。
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