東京における長期の資料調査収集によって一次資料を集中的に収集した。具体的には外務省外交資料館所蔵の第14回公開外交記録(「メモランダム(来往)綴(写)」「外地における本邦人の軍事裁判関係」「本邦人戦犯裁取扱関係雑件」)、国立国会図書館所蔵の複製版資料のうちSWNCC文書、FEC文書等を調査し、立教大学図書館では公刊マイクロフィルムのOccupation of Japanを調査した。 こうした資料調査は、研究助成受領者の一次資料に基づく実証的政治史研究の発展にとって実に有用であった。たとえば、資料検討の結果、合衆国の対独戦犯裁判終結政策が対日政策決定の引照基準として機能しながら、日独の状況の相違から注目すべき相違が生じたこと、「FEC007/3」文書の決定過程が諸国のBC級裁判終結に重要な影響がありそうなこと、いわゆる「GHQ裁判」の二重的性格などが調査の成果として判明した。来年度は、さらに東京への資料調査出張を継続することで資料的充実をはかりつつ、資料の分析を集中的に行なうことで、その成果を学術雑誌に投稿し、広く発表する予定である。 なお、今年度は、戦犯裁判終結の前提となるべき東京裁判判決直後の訴願問題を検討した論文を学会誌『軍事史学』に投稿、2名のレフェリー審査の結果採択され、発表することができたことを付言しておく。
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