本奨励研究は追加採択であったため、1999年度の研究成果を時期的に二つに分ける。まず、本研究が正式に採択されるまでの期間、限られた予算の中で本課題と関連したテーマに関して研究を続けていた。その際、日本国際政治学会1999年度研究大会において「同盟の『新しい役割』に関する概念的考察-東アジア安全保障体制に焦点を当てて-」と題する発表を行った。また、夏にワシントンDCを訪れ、少ない期間で米国公文書館で資料収集を行った。 次に採択以降に関してだが、本研究テーマである1970年代の日米中三国関係に関して、当時の当該国の対外政策のみならず、日米中三国の政策決定者の「認識」にも焦点を当て、政府資料を整理・分析していった。「認識」に関する研究の重要性は、自国の意図する通りに相手国がものを考えないという、国際政治の特質から生じている。70年代初頭は世界全体としては緊張緩和の時代であるが、日本の外交当局者はこの時期をむしろ戦後秩序構造の急速な瓦解の「危機」としてとらえた。米国での博士論文を修正して2000年2月にJapan's Normalization with Mainland China and North Vietnamと題する英語論文を発表した。 また、1970年代初頭の東アジアの国際関係を現在に援用した類いの研究成果として、99年11月に中国社会科学研究会(国際文化会館にて)、同年12月政策メッセ(中央大学駿河台記念館にて)において「冷戦後の日米同盟と日米中トライアングル」に関する研究発表を行った。
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