本年度は議会開設を実現させた1997年の住民投票に関する研究を行なった。 住民投票におけるイギリスの各党の対応は次のようなものであった。労働党は総選挙の公約として住民投票の実施を掲げており、総選挙後直ちに住民投票を行うことを明言した。しかしながら、労働党内にも権限委譲に対する支持の濃淡が存在しており、その結果、住民投票時には自治導入と独自の課税権の付与の是非が別個に問われることになった。 自民党は従来地方分権に積極的な姿勢をとっており、自治導入を提言した憲法会議に労働党とともに中心メンバーとして参加していた事情からも、上記のふたつの問いに対して共に賛成するキャンペーンを労働党とともに繰り広げた。 地域主義政党であるSNPは当初住民投票に党是とする独立というオプションが含まれていないという理由から、労働党と自民党の陣営に参加することに難色を示していた。しかし、党内穏健派への配慮や1979年の住民投票における敗北の苦い経験などが後押しし、最終的には賛成キャンペーンに加わった。 保守党は伝統的に連合支持の政党であり、権限委譲が長期的には独立への道を開く可能性があるという懸念から、有力政党としては唯一権限委譲反対のキャンペーンを張った。 来年度は権限委譲決定後の1999年に行われたスコットランド議会選挙における各党のキャンペーンとそれに対するスコットランド住民の反応を検証する予定である。
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