手続き的正義の観点を考慮した、公正な資源配分ルールの社会的意思決定メカニズムの理論分析。従来の「配分の衡平性」に関する研究は、資源配分ルールを帰結主義的な評価基準にのみ基づいて評価するものであったが、当研究では、配分ルールが導く帰結の望ましさの観点のみならず、ルールの手続き的特徴が正義の基準に適うかという観点を導入し、それがもたらし得る帰結に関しても手続き的にも公正と見なされ得るような配分ルールが民主主義的な社会的意思決定プロセスを通じて選択される為の必要十分条件を明らかにした。手続き的正義の観点から配分ルールに要請される性質は、資源配分の決定プロセスにおいて、ルールが個々人に選択の自由を保証するものであるという点である。帰結に関する正義の基準は、もっとも不遇な個々人の生き方の機会集合を出来る限り豊かにするような資源配分を、ルールが実現する事を要請するものである。このような互いに独立な要請を伴に満たす配分ルールは確かに存在し、それが民主主義的な意思決定プロセスを通じて選択されるには、ロールズ的正義の原理にコミットするような個人の存在が不可欠である事を明らかにした。 「責任と補償」の観点からの「配分の衡平性」に関する理論研究。衡平な資源配分の社会的意思決定に際して、帰結に対する個人の責任要因と非責任要因とを区別し、後者に起因する社会的不均等のみを社会的補償の対象として是正する様な配分ルールの存在可能性について分析した。この問に関する従来のこの分野の成果は、不可能性命題として要約されてきたが、責任性の概念により忠実に再定式化を行う事によって、かなりの可能性定理がある事を明らかにした。
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