研究概要 |
近年各国政府は民営化、公共事業に積極的にオークションを活用している。本年度の研究では、現実例として、民営化については、オーストラリアの発電所やメキシコの港湾設備、中国の国営企業の民営化のオークションを考察した。また、公共事業に関しては、アメリカのFCCによる周波数割り当て、チリの天然ガス パイプライン プロジェクト、ドイツのリニアモーターカー建設プロジェクトのオークションの特徴を分析した。 さらに、これらの現実例を踏まえて、政府によるオークションの特徴として、特に、(1)補完財のオークション、(2)入札者のタイプに相関がある場合を取り上げて、理論的分析を行った。 より具体的には、まず、(1)については、政府が、自身にとって補完財であるような複数財をオークションにより調達する場合、一括発注によるべきか、個別発注によるべきか、という問題を情報レントの観点から分析し、財を生産する費用が対称性を持つ確率分布に従う場合には、一括発注が選好されることが示された。(2)については、入札者のタイプに負の相関がある場合には、政府は逐次オークションにより、期待利潤最大化と効率的配分を同時に達成することができるものの、複数単位の同質財が異なる価格で売却される結果となり、入札者間の公平性の点からは問題が生ずることが示された。 一連の研究成果の一部はThe Aoyama Journal of Economics,フィナンシャル レヴュー,日本経済学会秋季大会等で発表された。
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