本年度、2つの課題に的を絞り研究を行った.如何なる要因が一番強く経済システムの変革を引き起こそうとしているかは1つ目はの課題であり、2つ目はこういった要因は各国の制度に如何なる影響を及ぼすのかということである.結果として、以下の研究成果を報告できる. 1.世界経済のグローバル化が、英米型経済システムへの収斂を引き起こそうとしている1つの重要な要因である.グローバルな生産・金融市場が、次のようなメカニズムを通して、収斂をもたらそうとしている.それは、(1)メガ競争による淘汰;(2)模倣;(3)自由な資本移動;(4)対外経済不均衡を是正するための国際協調;(5)国際金融機関による条件付きの融資および国際機関への加盟条件、である. 2.英米型経済システムへの収斂を引き起こそうとしている各国固有の要因がある.(1)日本や韓国の場合、戦後の高度な経済成長の原動力であった経済開発モデルが、現在ポスト工業化経済への移行を妨げる障害である.ポスト工業化経済とは、製造業などの「ハード」な産業ではなく、サービスやソフトウェアといった「ソフト」な産業が中心である新しい経済構造のことである.(2)中国、ロシア、ブルガリアが、中央計画経済から市場経済へと大規模な変革に直面し、例えば所有者・債権者権利の保護、法の支配、資本市場の形成といった市場経済の基盤である制度の構築に取り組んでいる. 上記の要因のため、各国の経済システムが変わろうとしているが、特に1.の(1)、(2)、(4)、と2.の(1)が日本や韓国の企業・金融部門改革に強く影響を及ぼしていると考えられる.中国、ロシア、ブルガリアの企業・金融部門改革に関しては、1.の(2)、(3)、(5)、と2.の(2)が一番重要であると言えよう.企業集団、銀行・企業間の関係、政府・企業間の関係といった制度の変化を考察しながら、各国における経済システムの変革の比較を来年度にも続ける予定である.
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