11年度に作成した論稿"伝統的な世界経済モデルにおける自由貿易からの利益の存在について:非完備な選好のケース"では抽象経済的接近法に基づいて非完備な選好のケースを取扱ったので、そこで最初に超過需要関数に基づく完備な選好のケースを取扱った論稿"On Gains from Trade in General Equilibrium Model of World Trade:Excess Demand Approach"(WP No.67、Dept.of Econ.Shiga Univ. June 2000)を作成しました。次に、経済成長を許すような動学的世界経済における自由貿易からの利益の存在は、基本的には経済成長を許すような動学的経済における競争均衡の存在証明をヒントにして証明する事が出来ので、その為にはまず経済成長を許すような動学的経済における競争均衡の存在を示さなくてはならない。そして、実行可能集合が成長可能な経済を上手く実行可能集合が有界な経済に転換出来る事を示せば、結局実行可能集合が有界な経済における競争均衡の存在を示す事に帰着する事となるので、そこで論稿"On the Existence of Competitive Equilibrium in Production Economies with General Consumption Sets over Discrete-time Infinite Horizon"を作成し、有界な実行可能集合をもった動学的経済の競争均衡の存在を示しました。そしてその際に実行可能集合が成長可能な経済における競争均衡の存在を取扱っている論文としてBoyd-McKenzie"The existence of competitive equilibrium over infinite horizon with production and general consumption sets"I.E.R.1993があるので、私の論文では出来るだけこのBoyd-McKenzie論文で用いられたモデルと比較出来るような形でモデルを構成し、特に、Boyd-McKenzie論文ではエッジワース均衡的接近法に基づいて、先ずこのエッジワース均衡が有界な経済において競争均衡である事を示し、その後でこの競争均衡が有界という制約がない元の経済においても競争均衡であることを示す事によって、このエッジワース均衡が競争均衡である事を証明していますが、その考え方をヒントにして、私の論文では最初に有界な経済において競争均衡である事を示し、その後でこの競争均衡が有界という制約がない元の経済においても競争均衡であることを示す事によって、有界な実行可能集合をもった動学的経済の競争均衡の存在を示しました。そして実行可能集合が成長可能な経済を実行可能集合が有界な経済に転換する際に、この転換が上手く上への一対一でしかもモデルと整合的な位相について連続である事の証明がほぼ出来ましたので、現在は、この転換に基づく実行可能集合が成長可能な経済に有界な実行可能集合の動学的経済の競争均衡の存在の結果を当てはめて有界な実行可能集合をもった動学的経済の競争均衡の存在を示し、元の実行可能集合が成長可能な経済に戻した時に対応する均衡が、実行可能集合が成長可能な経済の競争均衡となるかどうか、そしてこの証明方法を利用して実行可能集合が成長可能な動学的世界経済における自由貿易からの利益の存在を証明ができるかどうか、という事についての研究を進めています。
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