研究概要 |
超高頻度(ultra high frequency)経済時系列データは,広い意味では一般経済現象のリアルタイムでの記録として現れる.個別経済主体に依存したり,蓄積・計算コストがかかりるぎることから,従来は一般研究者がアクセスすることははとんど不可能であったが,最近になって金融・証券・為替市場の取引あるいは相場(quote)データとして利用可能になってきている.これらのデータは,市場の微視的構造(market micro structure)理論に基づく実証分析への利用が近年注目されている.データの整備が進み,実証分析への適用に期待がたかまる一方,解析ツールとしての計量経済理論はまだ発展段階であり,解くべき問題が数多く残されている.本研究の内容は(1)超高頻度為替レート・データおよびニュースのデータを用いた実証分析.(2)超高頻度経済時系列データをvisualizeする方法の開発およびコンピュータ・ソフトウェアの作成. 本年度は(1)についての研究を行った.超高頻度経済時系列データは.その発生時刻がランダムであることに一つの特徴がある.本研究では,超高頻度経済時系列が連続時間マルコフ過程のランダムな時刻での観測値として得られるものと想定する.観測時刻は最も単純な場合には強度パラメータ一定のポアソン到着であるが,一般的にはもとのマルコフ過程に依存して変化する強度パラメータを考えることも可能である.実証分析では,為替レートの変動に単純な幾何ブラウン運動とポアソン到着を想定した場合のニュース効果の検定を行った.この結果は『九州経済学会年報』1999年11月および『統計数理』2000年第1号に発表されている.さらに,経済指標の予測値と現実値の差(surprise)が為替レートの変動に及ぼす影響についての分析を現在行っている.
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