本研究では、経済データにおける離散的な持続時間のための統計的モデル(duration model)を開発してきた。平成11年度では景気動向指数などのマクロデータに応用したが、ミクロデータへの応用が最近進みつつあることに鑑み、平成12年度では観測値の個数が膨大なミクロデータへの応用を考慮した。これまでは、離散比例ハザードモデルを主として開発してきたが、観測値の個数が多いときには推定のための計算時間が長いという問題が生じたため、その問題を解決するために、もうひとつのモデルとして逐次順序プロビットモデルを提案し、さらに自己回帰過程のようなダイナミックな構造をもつ変量効果を導入した。そのモデルについては一部、統計数理研究所で行われたシンポジウム『統計的モデリングと推測に関する新展開』の講演予稿集におさめられている。また、現在、投稿中の論文(Omori(2000))では、さらにこれらのモデルがデータに対して妥当かを調べるために、周辺尤度を用いたモデル選択を現在行い、加筆・修正中である。 一方、ミクロデータ公開にともなう開示リスクにも取り組み、プロビットモデル、ロジットモデル、順序プロビットモデルを用いて評価するモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法により提案した。特にアイテム数が多いミクロデータを想定し、カテゴリに関して集計したデータではなく各個人のカテゴリに対する反応に基づいたモデルを考慮して安定的な母集団一意性の事後確率を求める方法を提案した、『ミクロデータの母集団一意性の事後確率の推定』として第68回日本統計学会で報告を行った。
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