本年度は、まず7月に「公的介護保険に関する住民意識・実態把握のためのアンケート調査」を、特定地域の65才以上全世帯に対して郵送法で行った。アンケート用紙は2833枚郵送されそのうち481枚の有効回答を得た。調査では、家族構成、同居世帯員の就業状況、所得、資産、公的・民間の高齢者福祉サービスの利用状況、ADL、公的介護保険の認知の程度に加えて仮想的な状況(単位あたり価格、時間)における高齢者福祉サービス利用希望の有無を尋ねている。 さらに、その調査で得られたデータに基づいて、介護サービス、家事サービス、給食サービス、訪問看護サービスの需要に関してConjoint Analysisをおこなった。推定にはrondom effectを含むポアソン推定法を用いた。推定結果から、全ての場合で希望利用回数が価格の減少関数であり、家計内生産能力との強い代替性が確認された。また、この推定結果を用いて、市場均衡分析を行った。標本を実際に公的介護保険が利用可能となるであろう標本に限定した場合には、均衡価格は仮単価の5〜10倍、現状の供給体制では少なく見積もっても需要の1/3も満たせない事が明らかになった。さらに、消費者余剰の損失は日本全体で年間、介護や家事サービス、訪問看護サービスでそれぞれ5兆円前後生じるであろうことが明らかにされた。
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