本プロジェクトの1年目にあたる本年度は、主に最終的な研究成果の基礎となるようなヒアリング調査およびデータ収集・資料収集を行った。しかしながら、研究成果が予想以上にあがったため、本年度においても研究論文2本が完成し、そのうちの1本が学術雑誌に掲載されることが決定した。 ヒアリング調査は、主に大蔵省OBや日本銀行OBなどの、現実の日本のマクロ経済政策に携わってきた方々に対して行った。本プロジェクトにとっては、過去10年間の日本の経済変動がどのような理由で引き起こされ、どのような形で経済政策がそれに影響を与えたのかについての事実関係の把握が非常に重要である。その意味において今回のヒアリング調査によって得られた情報は、本プロジェクトにとって大変有意義なものであり、大きな成果を得ることができた。またそれと平行して、日本のマクロ経済の変化に関する基礎的なデータの収集も行った。これらの資料とヒアリングの結果を合わせて用いることによって、事実関係のより正確な把握が可能になった。 これらの基礎的な資料を基にして、本年度は、"Long Term Investments and Financial Structure"と"Liquidity Demand of Cooperate Sector and Macro Economic Fluctuations"の2本の研究論文が完成し研究成果が得られた。1本目の論文は、別紙にあるように学術雑誌への掲載が決定している。1本目の論文は、マクロ経済変動に重要な影響を与える企業の投資行動が、経営者の近視眼的な行動によってどのような影響を受けるのか、そしてその問題を軽減するために、どのような資金調達を行うのが望ましいかを検討した。2本目の論文は、企業の流動性資産に対する需要が金融資産市場や企業の行動にどのような影響を与えるのかを検討すると共に、それがマクロの経済変動をどのような形で影響するのかを理論的に分析した。 これらの研究成果を踏まえて、来年度は実証分析も加えて本研究プロジェクトの成果をより実りあるものにしたいと考えている。
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