研究概要 |
今年度は、日本における業態開発の成功ケースとして位置づけられる(株)ニチイ(現マイカル)によるビブレの開発に焦点を当て、業態開発にかかわるイノベーションと競争の問題に接近した。研究の結果、明らかになった業態開発プロセスに関する事実は、以下の2点である。 1.ビブレの業態開発はニチイにいくつかのイノベーションをもたらした。そのイノベーションは総合スーパー・ニチイと専門百貨店ビブレとの間の異業態性にもとづく参入障壁を克服するなかでもたされたものである。それらのイノベーションとは、DCブランドメーカーとの取引関係の構築という商品調達イノベーション、完全買い取りに基づく自主マーチャンダイジングという商品政策イノベーション、およびセルフサービスから対面販売へという販売方法イノベーションである。 2.業態開発による競争優位は、店舗レベルにおける商圏適応性と企業レベルにおける業態可変性によって決定づけられる。商圏適応性とは、それぞれの商圏における競争と消費者の特性を店舗政策に反映させ、競合店との差別化をはかる取り組みがなされていることを指す。業態可変性は、地域的可変性と時間的可変性からなる。地域的可変性とは、複数の店舗がある特定の業態の基本コンセプトを共有しながら、各商圏への高い適応度を達成していることをいう。また時間的可変性とは、人口変動や交通体系の変化といった商圏特性の経時的変化に合わせて各店舗が不断に店舗政策の修正を行いうる性質をいう。 以上の研究成果を踏まえて、業態開発にかかわるイノベーションをさらに深く探求するとともに、業態開発をプロセスとして捉えるという視点から、このプロセスを引き起こすどのようなダイナミズムが生じているのかを明らかにすることを通じて,業態開発の理論構築に向けて研究を続けていきたい。
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