今年度は日本の派遣人材とアメリカのコンティンジェント・ワーカーの働き方と人的資源管理を比較・検討した。 まずアメリカでは、1997年の人口動向調査(CPS)によれば、コンティンジェント・ワーカーの数が約560万人にのぼり、全労働人口の4.4%を占めている。コンティンジェントな仕事とは、Polivka and Nardone(1989)によれば、個人が長期雇用のための明示的な契約も暗黙的な契約も持たないような仕事であり、非体系的な方法で最低労働時間が変化するような仕事をさす。特に本研究では、アメリカのコンティンジェント・ワーカーに関する文献をレビューし、理論的イシューとして(1)コンティンジェント・ワーカーの職務態度(組織コミットメント、職務関与、職務満足)(2)コンティンジェント・ワーカーと戦略的人的資源管理(SHRM)、(3)コンティンジェント・ワーカーと知識創造、(4)コンティンジェント・ワーカーと心理的契約の4つのパースペクティブを考察した。 次に日本におけるコンティンジェント・ワーカーの実践的インプリケーションを検討した。日本でもコンティンジェントな働き方のひとつとして派遣人材の働き方が注目されている。特に、登録型派遣労働者の数は1986年の8万7370人から、1996年の57万2421人と著しく増加している。本研究では、日本の派遣人材と正規従業員の職務態度の比較をSPSSを用いて詳細に分析した。その結果、派遣人材と正規従業員の組織コミットメント、仕事生活へのコミットメント、職務満足、キャリアプランには有意な差があることが明らかになり、今後の戦略的人的資源管理のあり方を示唆できた。 次年度は、個別インタヴューなどで情報を補いつつ、日本とアメリカのコンティンジェント・ワーカーの働き方の比較から、人材の流動化と個人と組織の新しい関わり方について結論を導きたい。また、これまでの研究成果をIFSAMの世界大会(於:Montreal)や日本労務学会国際シンポジュウムで報告し、海外の学術専門雑誌に投稿する。
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