研究概要 |
1997年に独占禁止法が改正され,純粋持株会社が50年ぶりに解禁された。純粋持株会社の解禁をめぐる議論が数多くなされ,多くの企業の関心を集めている。質問票調査では上場企業の7割,未上場企業の4割が何らかの関心を示していることが明らかになった。しかし実際に純粋持株会社に移行した企業は限られており,支配的な組織形態には至っていない。一方でカンパニー制を導入する企業はかなりの数に上っており,企業の組織改革,特に事業部レベルヘ権限委譲を行うことにより,意思決定の迅速化をはかり,環境変化へ対応しようとしている姿が伺える。純粋持株会社という法律上の形態がどの程度戦略的に有効かは議論の分かれるところであり,否定的な意見も多い。ただ,競争のグローバル化に伴う企業の海外進出に際しては,海外において持株会社を設立することにより,税負担が軽減され,グループの競争力が強化されると指摘する研究もある。 一方ヨーロッパにおいては持株会社を禁止する規定は従来からなく,持株会社は歴史的には大きな役割を果たしてきた。イギリスでは持株会社形態を採用することによって,同族企業の勢力が維持された。もっともそれによってイギリスの企業の競争力が低下したという意見が多く見られるように,今日においては持株会社という形態を取ること自体はあまり意味がないとされ,議論の中心は本社と各事業部がどのような関係をもって,本社が事業部をどのようにコントロールしていくかということに移っている。日本企業においてもカンパニー制のように,擬似純粋持株会社と呼べるような形態が多く,法律上の形態よりも,本社と事業の関係をいかに作っていくかがより重要な問題となるであろう。そのような現状を考慮して,純粋持株会社という形態にとらわれず,実質的な組織構造,組織における意思決定の過程を詳細に研究する必要性があるといえる。
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