研究概要 |
企画業務型裁量労働制がどのように認識されているかを数量的に把握するために、従業員規模100人以上企業の人事部長1,673名を対象に「企画業務型裁量労働制に関するアンケート調査」を2001年3月に行った(有効回答率14.9%)。その結果、次のような点が明らかになった。(1)企画業務型裁量労働制導入を考えている企業は少ない(79.9%が「導入を考えていない」)。(2)導入を考えている企業は「成果主義の徹底」や「従業員の自律性を高める」ことを導入目的としている。(3)多数の企業(70.8%)が事業所単位で設ける労使委員会は「煩雑」だと考え、それが「必要である」と考えているのは3割程度しかない。(4)3割強の企業が労基法38条によらない「裁量労働的勤務」を既に導入したり、導入の検討を行ったりしている。また、文献サーベイや聞き取り調査の結果もあわせて検討した結果、企画業務型裁量労働制が「ゆとりと時短」を創出するという本来の趣旨に沿った成果をあげているとは現時点では言い難い。裁量労働制が、その対象者に自律的な働き方を提供する可能性はきわめて高いが、そのためには次のような条件が満たされる必要がある。(1)個人の多様な働き方を認める組織風土の形成、(2)公正な評価能力をもつ管理者の存在、(3)対象者の、自分の働き方(キャリア形成)に対する意識向上、(4)経営者による導入目的の明確化(成果主義徹底だけのための手段として用いない)。 これらの点を鑑みると、裁量労働制、特に企画業務型裁量労働制が労使双方にとって有益な人事労務管理施策として定着するためには、経営者も雇用者もかなりの意識変革をすることが、特にエンプロイヤビリティーに対する意識を高めることが求められる。そして、それにはさらにある程度の時間が必要であろうと考えられる。
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